バブル直前の会議室には、ギョウカイの空気が充満していた。
CBSソニーでバイトを始めてから、営業所の会議室で出来たてホヤホヤの色んなPVやCMを観た。
この時ばかりは会議室にギョウカイの空気が充満してた気がする。
なぜかバイトも出席していた「朝礼」終わりに、遠方にセールスに行く人以外の人がドヤドヤと会議室に集まり、その当時ではデカめのブラウン管モニターをグルっと囲んで固唾をのんで再生されるのを待った。
デスクの女性の人たちは、朝イチでかかってくるショップからの電話の対応があるので、あとで独り占め状態で観てた。
1984年の春に会議室で観たCMは衝撃的だった。
穏やかでスマートな話し方をするCBSソニーの宣伝マンが、ビデオテープをセットしながら
「まもなく発売になる白井貴子のタイアップCMが届いたので観てみましょう。スゴく良い使われ方をしてますよ。来週からテレビで大量にスポット・オンエアされる予定ですので」
と前振りをしてから再生ボタンが押された。
カラーバーにピーっという1Kヘルツのテスト・トーンが響き、無音になってCMのクレジットが入り・・・・・・③ ② ①
1984CM CITIZEN Riviere 「コンニチワ...」「19才リビエール」 監督 井筒和幸 音楽 白井貴子
可愛い女の子がアップで映り、加えていたストローをはなしてニコッとしながら そのままキス。続くキスシーンのアップで目を開けてるところにコンニチワの文字。
音楽は宣伝マンが言ったように、サビの “♬ Chance! Chance! チャアアンス! ときめきに 愛をのせて~ ♬”
と伸びのある声で軽やかに唄われていて、画面にデカデカと「監督 井筒和幸 音楽 白井貴子」とクレジット(後にも先にもあんなにデカくクレジットが表記されたCMは見たことがない)
会議室でCMを観ていた21歳のバイトは、吉本新喜劇の “内場 さん”のような「イィィィィーーー!」という声を上げそうになるのを必死でこらえた。
いま観直すとそんなでもないが、このCMは当時のバイトには強烈なインパクトがあった。
それでは ハイ、みなさんご一緒に「 イィィィィーーー!」(イとエの中間のような発音で)
CMは30秒Verと15秒Verを観たんだと思う。
みんなで観た後にデスクの女性たちが観るのを知ってたので、その時にも会議室に潜り込んで観た。
この「Chance!」という曲が産まれたいきさつなど本人インタビュー記事もありました。https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/376849
このCMは、この先思わぬ所で繋がっていく。
白井貴子と言えば間違っても「ロックヤてるんだゼ」的なアバズレ感は全く無く、真面目で勉強ができてチャーミングな女の子がバンドのセンターに立つと急に輝き出し、まくしたてずに丁寧に歌詞を発音し白いTシャツにジーンズがピタッとハマるナチュラル・イメージ。
唄ってる曲も佐野元春「SOMEDAY」のカバー以外はあんまり聴いた事がなかったけど、「Chance!」は一聴して好きになりサンプル盤をもらってよく聴いた。
ロックンロール・エンジェルが唄う「Chance!」
コレはちょっと珍しい、ナチュラル感全開の夜ヒットで唄うVer.
「Chance!」までの白井貴子さんのイメージは、まさしくこのイメージ。
それにしてもこのセット、この量のススキや後ろのビルを作ったり、1曲にいくら予算がかけられたのか。夢のあるいい時代。
白井貴子の唄う「SOMEDAY」は、素直な唄い方で日本語が入ってくるので、とてもいい曲だったというのが再認識できます。
本家の方はクセが強くなりすぎて、最近は「ちょっと何言ってるか分からない」ので余計にそう思う。
のちに、このCM主演女優がモデル時代の今井美樹が演じてたというのを知り、そ時もあやうく “内場 さん” になりかけた。
多分このCMの後に撮られた映画が、井筒和幸監督の『犬死にせしもの』だと思う。今井美樹が映画に出たのは、このCMがきっかけだったのかも、知らんけど。
この映画は、ある意味逆にピンポン的に話題になった映画。
(調べてみると映画は1985年の10月に瀬戸内海でロケが行われたそうで、公開は1986年4月19日だった)
ちなみに、今井美樹の音楽デビューは2年後の1986年5月21日。バイトがギョウカイに就職した年でした。
よく伊丹空港に迎えに行ったのが、今となっては懐かしい想い出。
このあとロックンロール・エンジェルとは1996年 9月14・15日「日本をすくえ'96 阪神・淡路大震災救済支援コンサート 」で一緒になったが、バイトも成長していたので、さすがにもう “内場 さん” にはならなかった。
このコンサートも想い出深いコンサートだが、またの機会で。