2021年3月28日 今朝の1枚
早くも桜が満開になり、日に日に陽射しが力強くなってきています。
年が明けたなと思っていたら、アッという間に3月も終わろうとしています。とにかく3月は忙しかったので、しばらく更新できませんでした。
今朝はあいにくの雨模様。花々を散らすまでには至らないくらいの雨だと思います。
何も考えず、縛られるものをすべて捨て去り、心のゆらぎに身を任せればいい。
このアルバムに入っている曲「Peace Piece」をこの様に表現した人がいる。とにかく美しい曲で、その美しさをそのままズバリと言葉にされていた。
『Everybody Digs Bill Evans』BILL EVANS 1958年12月15日録音
ジャズがまだ黒人音楽だった1950年代後半、白人ミュージシャンとしてジャズ・シーンに登場したのがビル・エヴァンス。
彼の奏でる音楽は、それまでの黒人っぽい”ソウルやスイングとは異なり、洗練されていて、とても優美だった。
今日のような静かな雨の日には「Peace Piece」がとても似合う気がする。
Bill Evans "Peace Piece"
Complete Transcription: Bill Evans - Peace Piece
2つのシンプルなコード(Cmaj7→G9sus4)の永遠とも思える反復。自由自在に絵を描くように奏でられるフレーズは、まるで印象派の絵画を見ているようで静寂さは特筆すべき美的。
当時のバップ全盛時にはかなりアヴァンギャルドな曲だったはず。
クラシックで似ていると言われるのが、エリック・サティの「ジムノペディ 第1番」まるでこの曲の続きを演奏したかのよう。
ビル・エヴァンス、売出し中のアルバム。
レコード会社のリバーサイドは、どうしてもこのアルバムを売りたかったんだろう。大物ミュージシャンの推薦文がジャケットを埋め尽くす“全面広告”になっている。
「ビル・エヴァンスからはたしかに多くのことを学んだ。彼はピアノが演奏されるべきやり方でピアノを演奏する」(マイルス・デイビス)
・「ビル・エヴァンスはここ数年でいちばん気持ちのよいピアニストだ」(ジョージ・シアリング)
・「ビル・エヴァンスは屈指の存在の一人だと思う」(アーマッド・ジャマル)
・「ビル・エヴァンスには類い稀なオリジナリティとテイストがあるが,さらにすごいのは曲に対する構想を練る力で,彼が演奏すると,それがその曲の最終形と思わせるものがある」(ジュリアン・キャノンボール・アダレイ)
ビル・エヴァンスと言えば1961年に録音された『Waltz for Debby』で人気を決定的にしたが、多分このアルバムを録音しているときは、ミュージシャンズ・ミュージシャンで一般にはまださほど人気がなかったのではないか。
そうじゃないとビル・エヴァンスが目の前で演奏しているのに、食器はガチャガチャ、しゃべり声もけっこうな音量で録音されているはずがない。
今となっては、この辺りのノイズまでもが『Waltz for Debby』の魅力になっていて、1曲目の'My Foolish・・'のEの音をエヴァンスが弾いた瞬間から、気分はビレッジ・ヴァンガードにワープ。
これほどまでに生の演奏感・空気感を録音できたアルバムはないという評価になるのだが、何が功を奏すかわからないものだ。
ビル・エヴァンスの伝記映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』に「Peace Piece 」の解説シーンがあった。
映画館でも観たけどDVDでも見直してみよう。