子供の頃に聴く曲について
先日、1歳8ヶ月になった孫が来た時に録画しておいた「いないいないばぁ」を再生したら椅子に座ってしっかり観てた。
番組のHPを見ると「0~2歳児を対象にした番組で、映像と音で感覚を揺さぶることにより、子どもたちのさまざまな可能性と能力を引き出すことを狙いとしていると書かれていた。確かに楽しそうな明るくリズミカルな曲が流れている。
‘63年生まれの自分が幼少の頃、どんな音楽を聴いて育ってきたのか?
おぼろげな記憶を辿ると観てたテレビで「おはよう!こどもショー」に行き着き、愛川欽也さんが入ってたロバくんは思い出すけど、番組でかかってた音楽は記憶にない。
幼少の頃に聴いた音楽で今でも覚えてるのは「鉄腕アトム」
多分自分的にはこれが一番古くに聴いて、今でも覚えてる曲だと思う。
(おじいちゃんと)
鉄腕アトムのテーマ曲は手塚治虫さんが髙井達雄さんに作曲を依頼してできた曲。
(制作秘話が面白く語られてる。 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58073)
では鉄腕アトムの音楽に影響を受けたか? と言われると答えはNOだ。
5歳で筒美京平の洗礼を受けた
一番最初にカッコイイ曲だと思ったのは「ブルーライトヨコハマ」だった。
これは鮮明に覚えてる。この曲を唄いたくてオヤジにレコードをかけてもらい、マイクで唄って録音してもらった。歌詞の意味など全くわからずに覚えて唄っていて、その姿を見て大人たちが笑って聴いてた記憶がある。
まだカラオケなど無い時代、オーディオ好きのオヤジが工夫して楽しませてくれたみたい。
この頃は「シャボン玉ホリデー」も大好きで、クレイジーキャッツのコンサートに
千日前大劇にも連れて行ってもらった。
今から思えば番組エンディングに演奏されてた「スターダスト」はどう思って聴いてたんだろう。
幼稚園で「ガチョーン」とか「お呼びでない」とかやってみるけど、笑うのは先生だけ。童謡とか唱歌とかには全く興味がなかったし、オヤジはラテン系の曲を好んで聴いていたので、大人になってもこの頃の刷り込みによる影響は大きいんだと思う。
風土と文化の根本的な違い。
同じ頃、アメリカではスヌーピーのプロデューサーがサンフランシスコのゴールデンブリッジをTAXIで移動中、偶然ラジオでヴィンス・ガラルディの曲を聴き、このセンスの良さをスヌーピーの音楽に取り入れたいと思い「子供向けの良質な番組には良質な音楽が必要だ」という想いで番組の曲を依頼。
ちなみにプロデューサーがTAXIで聴いた曲が
『Cast Your Fate to the Wind』
当時この曲はシングルカットされていて1963年のグラミー賞(Best Original Jazz Composition)を受賞している。
でも、ヴィンス・ガラルディという人はなかなか個性的な顔をしたミュージシャンで
個性的な髭を蓄えた容姿も特徴的だし、小柄なのを逆手に撮ったジャケットのセンスも池乃めだか的なユーモアセンスを感じさせる。
思わずジャケ買いしてしまいそうな素晴らしいジャケット写真。
このアルバムでは1曲目の映画『黒いオルフェ」のテーマ曲カバーも、トリオ編成で、高速アレンジにしてるところが滅茶苦茶カッコいい。少しブラジリアンな要素も入ってるから余計に好きなんだと思う。
大人も楽しめる、素晴らしいピアノトリオ・アルバム。
「いないいないばぁ」もいいけれど、孫に聴かすのにスヌーピーはどうかな⁉︎ と思って聴き出したら、大人が楽しめる素晴らしいピアノトリオ・ジャズアルバムだった。
つまり、スヌーピー好きの子供たちはジャズを聴いて育ったということになる。
ディズニーのミッキー・マウスも初期の音楽はデキシーランド・ジャズだったし、アメリカではジャズが親しみがあり、ジャズの持つ娯楽性が子供達に最適だと思われていたのかもしれない。
イギリスのサンダーバードは交響曲がベースだし、この辺りお国柄が反映されていて面白い。
日本ではウルトラ音楽の冬木透さんもいるが、当時からの子供向けの曲って鼻声っぽい合唱隊が多く、結局アンパンマンの路線がメジャーになってる。
聴かせるなら まずはこの曲かな。
なんとなくプロデューサーがTAXIで聴いた『Cast Your Fate to the Wind』の延長線にある曲に聴こえませんか。プロデューサーの想いがきちんと伝わり、アニメの動きもかわいいし楽しそう。
「Linus and Lucy」
アンパンマンではなく、こんなテーマ曲を聴いて育ったら随分違う感性が養われないだろうか。
ジャズという言葉を聞いて、オシャレとか、難しそうとか、渋いとか、そういう事をすぐ連想されてしまう風潮がいまだにあるが、それはジャズの持つほんの部分的要素に過ぎない。
ジャズは、楽しくて、笑えて、くつろげて、そして踊れる。僕たちを緊張感から解き放ち、大好きな人達と過ごす時の最高のバックグラウンド・ミュージックになる大衆音楽でもあることを、この2枚のアルバムは雄弁に語ってくれていると思う。
ジャケットは子供向きだが、中身は大人もしっかり楽しめる。
クリスマス・アルバムもいわゆるアニメのサントラ盤とは思えない出来。
お洒落でハイセンスなメロディ、ヴィンスの個性でもある暖かく柔らかい、流れるようなタッチのピアノが素晴らしい。
ヴィンス・ガラルディはジャズ史に名を残したピアニストではないが、チャーリー・ブラウンのテレビスペシャル、スヌーピー音楽の作曲者として後世に名を残した。
ヴィンスの仕事は、スヌーピーなしには無かったのかもしれない。でも、スヌーピーのBGMと知らなくても、誰もが楽しめる素晴らしい曲を書き、素晴らしい仕事をしたと思う。47歳という若さで亡くなったのは早すぎる。
さぁ、聴かせてみたらどんな反応するのかな?