9thコードの洗礼を受けた1984年
今年も師走に入り、街ではクリスマスの飾り付けが目に付くようになってきた。
この時期に聴く曲で、未だに色褪せない曲が
「Last Christmas」Wham! (1984年)
大学時代バイトしていたレコード会社で出逢ったワム!
83年にデビューしたワム!は、とにかくバブル前夜の1984年は絶好調の年で、
出す曲出す曲がヒットチャートを駆け上がった。
7月 イントロからおピンク色の SAXがブロウする
「Careless Whisper」
8月 日立MaxellのCMソング
「Freedom」
そして12月
人気絶頂だったワム!が1984年のクリスマスに合わせて発売した。
タイトルの“Last”は最期ではなく“去年”という意味で失恋がテーマ。
ワム!名義で発売された曲だが、ジョージ・マイケル一人で録音。
ワム!のデビューの頃のバイト話は↓
アメリカ村近くにあったCBS SONYの大阪営業所の会議室で観た「Last Christmas」のプロモーションビデオは、雪山のロッジでワム! の2人も登場する若い男女がクリスマスパーティーをしている様子が映っていた。
当時21歳の貧乏大学生には憧れどころか、全く想像できないパーティシーン。ゲレンデとかロッジとかスキー関係のセレブ感に「俺には無縁の世界」と思いながら観ていた。
色んな事を教えてくれた、洋楽プロモーターのSさん。
洋楽のプロモーターSさんとビデオを見ながら話していたら
「この曲カッコいいだろう、何故だかわかる? イントロから繰り返される循環コードの上のナインス(9th)の音がフワッとした感じに聴かせるからだよ」
と教えてくれた。
最初はあまり聞いたことがない言葉のナインス? 業界用語か?
(Sさんは今でもよく使う業界用語もいっぱい教えてくれた)
と思ってたが、コードの事だと教えてもらっても譜面を読めるわけでもなく、音楽的な知識もほとんど無いけれど「9th」を使った会話をしたらカッコ良さそうだと思った程度で聞いていた。
その時の僕は、わかったような・わからないような顔をしていたんでしょう。
Sさんはあることを思い出したようで
「大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」は聴いたよね」
と聞いてきた。
「ハイ、聴きました。イントロとかサビのメロディも一発で覚えるしタイトルも印象的。漢字は違うけどヨシユキ繋がりもありますし」
と返事したと思う。
Sさんが続けて
「大沢誉志幸のイントロで、ずっと“ッレ・レッ・レレ・レミ”って鳴ってるだろ、あれもナインス・9th。 だ・か・ら カッコいいんだよ。
“ッレ・レッ・レレ・レミ”の無いイントロだったら絶対売れてなかったと思うよ」
このコメントでフワ~っと聞いていたナインスについて
「 持った湯飲みをばったと落とし、小膝たたいてニッコリ笑う」(浜村さんの名調子風)
詳しい理論は置いといて、モヤモヤと聞いていたことが「同じ響きがカッコいい」というのが分かってスッキリして凄く嬉しかった。
「そして僕は途方に暮れる」は大沢誉志幸の少し掠れた声と、作詞の銀色夏生の世界観がぴったりハマった曲。
銀色夏生という作家もこの時初めて知った。
歌詞よりもメロ好きなのであまり歌詞に興味が向きづらかったけど、この曲の歌詞は何か今までの人たちとは違うなと思ってみていた。
アレンジャーがギターワークショップで聴いていた大村雅朗だと知ったのも、Sさんから9th話を聞いたあと。
今聴き直しても適度に使われてるシンセサイザー、王道のカノン進行なメロディ、打ち込みではないリズム隊のグルーブ感と、いい具合の掠れ声感のあるヴォーカルがスタイリッシュ。
この2曲を聴くと懐かしく思いだす「9th」の記憶。
この時期にワム!の「Last Chrismas」を聴くと、9th繋がりで必ず大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」を思いだす。
おまけにジョージ・マイケルは同じ63年生まれで53歳で逝ってしまったが、命日が12月25日というのもあり「Last Christmas」は色んな思いが重なって聴いてしまう。
大沢誉志幸は数年前にFNSとかで観たけど、よくあるクセツヨな唄い方になっていて観るのをやめた。
僕のCD(レコード)好きでLIVEはあまり好きじゃないのは、この手のクセツヨ系を聴くのが大嫌いだから。同じ歌を唄ってる内に面白くなくなってくるんだろうなと想像するけど、酷いクセツヨ系シンガーの多い事。(達郎さん的なLIVEでCDを再現とまでは望まないけどね)
余談だけれど、「そして僕は途方に暮れる」のプロモーションビデオをYouTubeで検索したら1985年1月のフジテレビ「夜のヒットスタジオ」の映像が出てきた。
この時代なので生演奏だと思うけれど、とにかくバンドの押しやられ感が酷くて、可愛そうになる。カラオケはNGだった時代、もうちょっと考えてやれなかったものか。
この曲はイントロの「9th」も魅力だけれど、1番のサビまで待たせに待たせて〜
忘れた頃に「タンッ」って入ってくるスネアが凄くカッコいいと思ってる。
こういうアレンジは現場で考えただろうな、頭の中だけでは出来ないと思った。
そういう目でヒットスタジオで映ってるドラマーを見ていると、1番のサビまではキックとハイハットをチョロっとだけ使ってるけど、1番のサビ終わりの「そして僕は途方にくれるの「レ」で叩く「スネアの1発目」を撮らずにどこ撮ってる? アレンジの旨味もわかってないカット割りだなぁ…、なんて思いながら観た。
まぁどうでもいい話でした。