ポン酢・ポンズ・ぽん酢・ぽんず 私的ポン酢考察。
もうすぐ3年になるコロナ禍。ワクチンを射っても射っても感染者数は減らず、1日3〜4万人の感染者数が当たり前になってきた。そろそろ第8波に向けて各地で感染者数が増え始めている。
10月に入り気温がグッと下がってきたので、いよいよ鍋の季節。
温かい鍋を食べて自己免疫力を上げていれば感染もしないような気がしてくる。
日没の時間が早くなってくると、夕餉のメニューに迷ったら簡単で美味しくて温まる鍋になることが多くなる。
向田邦子さんが好きだったことで有名な『常夜鍋』
定番はきのこや野菜に、タラやカワハギを入れたり鶏肉を入れたりする具だくさんな湯豆腐。最近良くやるようになったのが常夜鍋。
常夜鍋とは“毎晩食べても飽きない鍋”という意味で、鍋に昆布をいれて水とそれ以上の量の日本酒を入れ豚肉、ほうれんそうをしゃぶしゃぶのようにさっと煮てポン酢で食べる。薄揚げを入れても抜群に合う。
最近、日本酒の代わりに焼酎(芋)で試したら、香ばしい香りで日本酒以上においしいと思ったので最近は焼酎を入れることが多い。
常夜鍋が大好きだった向田邦子さんは、自宅に編集者を招いて豚肉とほうれん草だけの常夜鍋をふるまわれたそうで、向田さんはポン酢ではなく醤油にレモンを絞り入れたツユで食べるスタイルだったそうだが、我が家はポン酢。
鍋の主役はポン酢!?
約60年の人生の中で、少なくとも50年に渡ってポン酢はたくさん試してきた。
ポン酢を広めた立役者とも言えるミツカンの味ポンからマニアックな黒門のふぐ屋・太政のポン酢まで、おいしいと聞けばひとまず買って試してみるというのを繰り返し、何十何百というポン酢を味わってきたと思う。
スーパーや百貨店の商品棚には数多のポン酢が並んでいるし、旅先でも見たことのないポン酢をよく見かける。地域ポン酢で黒門ポン酢や谷町ポン酢とか、とにかく日本人、特に関西人はポン酢が好きな人種のようだ。
ここに2本のポン酢があり、どちらも我が家の常備ポン酢である。
試して試して結局常備置いておきたいと思ったポン酢はこの2本。
左は「勝貴屋のぽん酢」で、右側が有名な「旭ポンズ」
酸 味 旭ポンズ > 勝貴屋のぽん酢
出汁感 勝貴屋のぽん酢 > 旭ポンズ
値 段 勝貴屋のぽん酢 > 旭ポンズ 瓶の小さい勝貴屋のぽん酢の方が高い。
原材料も似てるようで、かなり違う内容になっている。
関西のポン酢界のレジェンド・旭ポンズがなければ勝貴屋のぽん酢は生まれなかった? (知らんけど)
関西ではポン酢界のレジェンドといえば、八尾の旭ポンズ。
ラベルに“完全味付”と記されていて自信の程が感じられる。
もともとは“ふぐ提灯”で有名な新世界「づぼらや」の常連客だった先代が、「てっさ」や「てっちり」に使われていた「づぼらやのポン酢」に惚れ込み、この味を家でも楽しめるようにと味をパクって作られたのが「旭ポンズ」
先代は「うどん・そばの出汁の素」を作っていたので、カツオやイワシの混合節をベースにして柑橘類の種類や配合を1年かけて一人で研究し、試作を繰り返して材料の配分を調整し完成させたそうだ。
スダチとユズは香りも酸味も強く値段も高いので「づぼらや」の味に近づけるとすごく高い商品になってしまう。そこで、当時は商品価値の低かった酢みかんと呼ばれていた「ユコウ」を多め入れることで原価が下がった。
旭ポンズの凄さは、誰も使わなかったユコウに目をつけたところだ。
ユコウは徳島県などで自然交雑によって生まれたユズの変種らしく、古くから知られていたが商品としては価値がないとされて捨てられていた。香りはユズに似ているが果汁の味に締りがなくボケた感じで少し苦味もあるのでなんにも使いようがなかった。ただ皮はユズより薄く加工がしやすく果肉はレモンのようにタップリ詰まっている。
安価で果汁がたっぷり「ユコウ」には酸味は少ないが爽やかな風味があり、スダチとユズを支えて、かすかな苦味がいいアクセントにもなって旭ポンズは大ヒットした。
今ではユコウは幻の柑橘類とか言いように言われているが、昭和の時代には誰も見向きもしなかった。
やしきたかじん氏が「八尾にメッチャうまいポン酢がある。旭ポンズというポン酢や!」とラジオ・テレビで言い始めて一気に人気商品になったが「市販のポンズ(旭ポンズ)は酸っぱすぎて苦手」という奥さんの声をもとに、ダンナさんが試行錯誤して完成させたのが勝貴屋のぽん酢。(もともとは酒屋さんだったらしい)
原材料は2種類の醤油1つはたまり醤油を使って、柑橘にユズとダイダイ。他にはカツオ・サバ・ムロアジ・昆布・椎茸。
原材料費が高くなり旭ポンズよりも値段は高くなったが、まろやかな酸味と出汁感が強くこちらも完全味付け的な美味しさ。
今でもご夫婦で作られているので平野区まで買いに行かないとなかなかお目にかかれない幻のぽん酢のように言われている。
この2本の使い分けは厳密にコレには旭ポンズ、コレには勝貴屋のぽん酢と決められてはない。鍋の種類や、刺し身やなまこに使ったりするときもその日の気分次第。
たまには合わてみたりしながらこの2本を楽しんでいる。
番外ポン酢、そのまま飲めるおいしさ。(真似したらあかんよ)
もう一つ加えてポン酢3銃士とするなら、七味・山椒で有名な堺の和風香辛料の老舗・堺 やまつ辻田の「実生柚子ぽん酢」を加えたい。
ほかにも候補は「ひろたのぽんず」など色々とあるが、やまつ辻田の「実生柚子ぽん酢」は辻田氏が「えぇ材料しか使ってません」と言い切る材料で作られている。
兵庫・龍野 末廣醤油の本醸造醤油
京都の出汁専門店 うね乃の出汁
など、こだわりまくった材料に高知・北川村の実生柚子の絞り汁をタップリと使っているので、ぽん酢をそのまま飲めるくらいおいしい。
360mlに100mlの実生柚子の絞り汁が入っているそうで、そのせいもあって値段も1080円と高めだ。
ただ、このポン酢、おいしすぎて鍋で使うとすぐに薄まってもったいないのと、期間限定商品なのでいつもあるとは限らないので、常備ポン酢としては上の2つになる。
「実生柚子ぽん酢」蒸した野菜や焼き魚、刺し身や肉をつけて食べたりすると最強だ。
干物にかけると臭みが消えて魚の旨味が引き立つのだそう。
ポン酢は海外旅行の必需品
いっぱい飲んできたポン酢だけれど、酸味・甘味・旨味・塩味に香りが調和された万能調味料だと思う。
ちょっとイキってニューヨークのグランドセントラル駅の地下に有名なオイスターバーでの想い出話。
グランド・セントラル・オイスター・バー&レストラン 公式サイト - Grand Central Oyster Bar & Restaurant Tokyo
もう創業100年を超えてると思うが、牡蠣はそんなに好きじゃないけれど、店の雰囲気が最高なのと、お試しセットなら7〜8種の牡蠣がもられたプレートが14ドルくらいだったので、かれこれ10回以上は行っているはずだ。
就職前に息子と一緒に行ったときもここを訪ねた。
牡蠣を味わうよりも、この場所にいることが幸せな感じがするような特別な場所。
個人的には牡蠣よりもボストン・クラムチャウダーが好き。
店の一角に世界中の牡蠣が並べられていて、お好みの地域や種類の牡蠣をオーダーもできるし、盛り合わせのように頼むことも出来、かっこいいニューヨーカーがたちが白ワインを片手に牡蠣にレモンを絞ってケチャップ(チリソース?)のようなソースを付けたりしながら食べていたので真似てみたところ、あまりの不味さにのけぞった。
アルミホイルを噛み締めたような感じがした。
牡蠣と白ワインも全くダメだったし、ケチャップやチリソースなど全くダメで、心の底から「ポン酢」がない世界とはこんなに不味いものなのかと痛感。
この体験から海外旅行に行くときには必ずポン酢を持参する。
オイスターバーに行くとき2回目以降は必ず持参し、ポン酢で食べた牡蠣は美味しかった。日本酒があればもっといいけど、ワインは懲り懲りなのでビールをチョイス。
今となってはピーティーなウイスキーを牡蠣に垂らしながらでもいけそうだ。
万能調味料なポン酢は牡蠣だけではなく、魚にも肉にも使えるので海外に行くときの必需品。
ポン酢がなかったら寂しい食卓になってただろうなと思う還暦前のおっさんでした。