1周廻ってコダワリ目線

ある意味、逆にピンポン。

2021年2月21日 今朝の1枚

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チック・コリアが逝去。2/12の早朝、稀な種類の癌を患っていて急逝したという情報がFBにアップされて知った。真偽の程がわからなかったが、徐々にいろいろなニュースサイトで報じられ訃報が本当なんだと確認した。去年はマッコイ・タイナーが逝去。グレート・ピアニストが次々とレジェンドになっていくのは本当に悲しい。

 

今朝の1枚はCHICK COREALight as a Feather』1973年

チック・コリアといえば『Return To Forever』という人が多数だと思うが、彼の作品の中で一番好きな「スペイン」が聴けるこのアルバムにした。


Spain

イントロに「アランフエス協奏曲」が使われ、難しい曲なのに多くのアーティストがカバーするスタンダードナンバー。

アコースティック・ピアノではなく、エレクトリック・ピアノの音が哀愁のあるメロディを増幅させている。

ジャズシーンを変えた伝説の1枚 

 発表当時から「70年代のジャズシーンの方向を示した極めて重要な作品」と言われていたが、初めて聴いたのは発表後8年経った1980年 高校2年、オーディオ好きが講じて日本橋のオーディオショップに通い詰めていた時。

当時はとにかくジャケットが印象的で、今までのジャズアルバムとは世界観とは違うというのを聴かずとも理解できた。

ちなみに、この鳥を“カモメ”という人が多いが、“カツオドリ”という鳥だそうだ。

 

Return to Forever

Return to Forever

  • アーティスト:Corea, Chick
  • 発売日: 1999/11/16
  • メディア: CD
 

高校2年生が『リターン・トゥ・フォーエヴァー』が名盤中の名盤だと言われて聴いてはみたけど・・・、何を持って名盤と言われるのかはピンとこなかった。

「革新的な音楽性と卓越した演奏技術に裏打ちされた」と言われるが、今でもはっきりとは理解できていない。卓越した演奏技術はチック・コリアの恐るべき早弾きやスタンリー・クラークのグイグイ迫るロックなベースがそうだというのはわかるのだが。

個人的には4曲目は23分もあるけど前半の「Sometime Ago」はいる? と思っていつも飛ばして聴いてしまう。後半の「La Fiesta」のグルーブ感がこのアルバムの唯一の救い。

チックの弾くフェンダーローズの音がクールでカッコいい。

アルバムではなく、バンドのReturn To Foreverからの影響を受けた。

マイルス・デイビスアート・ブレイキーが才能のある若手ミュージシャンを積極的に起用してジャズ界を盛り上げていったように、バンドのReturn To Foreverに起用されたミュージシャンが、このあとフュージョン界を盛り上げていった。

アイアート・モレイラ、その嫁のフローラ・プリム

スティーブ・ガッドやアール・クルー、アル・ディ・メオラなど。

個人的によく聴いていたミュージシャンがReturn To Forever出身だったというのを社会人になってから気がついた。

 

チック・コリアのアルバムの中には演奏ではなく、レコーディングで注目されたアルバムがあったのを思い出した。

チック・コリアとフリードリヒ・グルダによる2代のピアノのための即興演奏のライブ・レコーディング・アルバム『The Meeting』

The Meeting / Chick Corea & Friedrich Gulda

The Meeting / Chick Corea & Friedrich Gulda

 

咳やくしゃみをした人がどの辺りに居るかまでリアルに録音されていて、客席のノイズが売りになっていた。有名なオーディオ評論家が「圧巻は客席、こんなに綺麗にリアルに録音されている客席は知らない」と記事にしたので、妙な聴かれ方をしていた。


Corea, Gulda: Double Piano Improvisation Pt.1

 

客席のノイズもアルバムの重要な要素になっている作品は多く、ビル・エヴァンス『WALTZ For Debby』にも客席の会話や食器の擦れ合う音、地下鉄のゴォ〜っというノイズまで収録されている。

ライブレコーディングは、客席の音も含めさまざまな“暗騒音”が入ることで、臨場感を醸し出している。

 

 

 

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2021年2月14日 今朝の1枚

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今朝の1枚は、聴いたことはなくても、ジャケットは見たことがあるというアルバム

『Cool Struttin'』Sonny Clark   1958年1月5日 NY録音

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ひと目でNYの街だとわかるクールで、これぞJAZZというカッコいいジャケットが印象的。

タイトルのStrut「気取って歩く」という意味なので、スーツを着た女性がコツコツと靴音を鳴らしながら、少し気取って歩いてる情景がこのアルバム・ジャケットの構図に収められている。

後ろの男性がコートを着ているので、撮影は冬だと思っていたが

アルバムのレコーディングが1958年1月5日なので、レコーディングの前後に撮られたんだろう。

すでに発売以来60年を経過しているが、いま見ても聴いてもカッコいい素晴らしいアルバムだ。

 

クール・ストラッティン

クール・ストラッティン

 


Sonny Clark - Cool Struttin'

 

口ずさめるようなメロディと親しみやすいアレンジがモダン・ジャズの典型的なスタイルとしても印象深い。

このアルバムのリーダーのソニー・クラークはこの時26歳、マクリーンも26歳、アート・ファーマーが29歳、リズム隊のポール・チェンバースは22歳、フィリー・ジョー・ジョーンズが32歳。

この当時の一流ミュージシャンと言われる人達は20代の前半にすでに名演奏を残している人が少なくない。

26歳で急逝したスコット・ラファロもそんなミュージシャンの一人だと思う。

ブルーノートサウンドを生み出した伝説のレコーディング・エンジニア

個人的には、このLPでルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)の存在を知り、彼のマスタリングがこのアルバムのサウンドの肝だというのを知った。

ジャズ史に残る数百タイトルもの「名盤」の録音を手掛けてきた伝説のエンジニアは、マンハッタンの対岸ニュー・ジャージー郊外にあるハッケンサックにある自宅のリビングルームをスタジオとして使いレコーディングされた。

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ブルージーな曲調とRVGマスタリングらしいナローなイコライジング、音圧の高くレコーディングされたサウンドが相まって、時にはやりすぎとも思えるような強烈な音が刻まれている。

彼がエンジニアとして参加した作品はどれも、楽器やアンサンブルなど曲中でフォーカスしたい部分をしっかりと聴かせてくれる。

 

2009年の冬、音楽番組のロケでNYを訪れた時ルディに取材の申し込みをして1度はOKの返事をもらえたが、その後気がかわったのかNGと言われて訪問できなかったのが残念だった。

(晩年は人見知りがひどかったようだと聞いた)


【日本語字幕】ルディ・ヴァン・ゲルダー『生い立ち&制作秘話』【英会話学習】

 

『Cool Struttin'』は冬に録音されたという影響もあるのか、全体的に哀愁を帯びていているけど重くはなく、冬のNYの落ち着いた都会の音が響いているというイメージ。

 

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モノの価値とは何なのか?

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 先日ロケに立ち会った際、京都の有名な古美術店で北大路魯山人の器を間近で沢山見せていただいた。

全くこの手の美術品・骨董品に疎いので、価値については見当も付かないし値段を聞くのも野暮だなと思ったりして。

お店の方がおっしゃるには「同じような魯山人の器は美術館だとケースの中にあって、見るだけで触ることなどできないけど、古美術店だと実際に触れて手触りや重さも感じられるし、お店の方から色々とお話も聞けるから気軽に覗きはったらいいんですよ」

とは言うものの・・・

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ド素人には敷居が高くて、とても・とてもプライベートでは一歩も入れそうにありません。

 

知性も財力もあるカッコいいジジイなら、バーや料理屋さんで食べ物以外にグラスや器でも話が盛り上がり、器もご馳走の一つになっていくのでしょうが、シガナイ・ジジイはそうはいきません。

餃子でビール、蕎麦屋で板わさ・冷酒が分相応。

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桁違いの値段に、クリビツ・テンギョウ。

ロケがひと段落した時に、同じように値段が気になってたディレクターがご主人に聞いたところ

ドラムロールが鳴る事も「いくらだと思います?」という引っ張りもタメも全く無く

「これは5枚セットで〇〇万円」

「こっちのお皿は〇〇万円ですわ」

と、車を通り越して中古の家並みの値段をサラッ~と言われた。

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「えっ~~~⁉️  それは高いの? それともそんなもん? 全然わからん」

と心の中で叫び、改めてモノの価値について考えさせられた。

遠くから見てるだけ、決してそっちには行けないし行かない。

骨董の世界では、真贋の見極めが「知識」と「経験」によるものが大きいので、目利きの世界は「知識のプライド」と「積み重ねた信頼」で成り立ってるんだと思った。

 

モノの価値って何なんだろう。

「欲求」と「供給」のバランスで決まるものだと思うけど、嘘をついてないという前提がベースのはず。

最近のニュースで報じられている偽物版画の流通は、画廊を営む画商が「本物」と言って百貨店などで販売されると素人は信じますよね。こんな事を企む輩は画商として本物を見極めるプライドを捨てて金儲けに走り信頼も失い、同業者に迷惑かけてますね。

 

値段が時価の寿司屋、ソムリエから薦められるワインとか、美味しいに違いないとは思うけど、値打ちと金額のバランスがさっぱり分からない感じに似てる。

お店の信用やソムリエバッジを信頼して信用するしかしょうがない。

 

古美術の世界も学んでいくと楽しい世界なんでしょうが、もし壊したら・・・と思ったら近づくのも怖くなる。

うすはりのグラスで飲むビールは美味しいなと思うけど、これを割っただけでもウワっっと思う人には、この世界は絶対に向いてないと思った。

ヤマザキ・パン祭りでもらった白いお皿にベーコンエッグを乗せて食べる朝食が身の丈かな。

 

 

 

2021年2月7日 今朝の1枚

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1年で一番寒くなる立春のころ、生まれた年の昭和38年は「三八豪雪」と言われた大雪が降った年だったそうで、大阪府下でも水道管が凍り破裂したので、雪を風呂桶に入れて水にしようとしたりとか大変だったと聞かされました。

 

今朝の大阪は快晴で気温も6度あり、4月頃の陽気になるそうだが、今朝の1枚は雪原で録られたジャケットで有名な

『Flight To Denmark』 Duke Jordan  '73年11月コペンハーゲン録音 

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Flight to Denmark

Flight to Denmark

 

ビバップの基本は、常にコード進行に沿ってアドリブをする。

1922年4月1日生まれのデューク・ジョーダンはエイプリルフール生まれに似合わず、真っ直ぐなバップ・ピアニストでビバップの様式を作ったと言われる、チャーリー・パーカーとの共演で知られていた。

ビパップの祖・チャーリー・パーカーは和音の出せないサックスという楽器で、なんとかコードを表現したいというところからメロディを工夫する=アドリブを入れることによりコード感を表現できるような演奏を目指した。

これがビパップと理解してる。

 

デューク・ジョーダンビバップ以降に流行ったファンキー、クール、モードジャズとも全く無縁だった。スタン・ゲッツのグループに参加したりしていたが、’60年代まではあまり人気がなかった。

ここまでは苦労人アーティストにありがちなエピソード。

しかし、彼に運が向いてきたのが’70年代に入りヨーロッパでハード・バップがリバイバルそのブームに乗ってデンマークのレーベルからリーダー・アルバムを発表。

そんな時代の波に乗ってリリースしたのがこのアルバムだ。

人にはいろいろな波がやってくるが、その波に「乗ろうとする」か「乗せてもらおう」かと思っているかで、随分結果が変わるというのは個人的に味わったこと。

リラックスして聴けるJAZZ好きは、いつでも聴いていたいアルバム。

オリジナル曲の1曲目「No Problem」や「Flight To Denmark」のほかスタンダード曲を織り交ぜた渋めの選曲

カチッとしたリズムとビートはマッズ・ヴェンディングのベースとエド・シグペンのドラミング。このリズム隊が全体を支えてデューク・ジョーダンの朴訥だが端正で、少し哀愁のあるピアノ・タッチが実にかっこよくマッチング。

ホールの響きを生かしたレコーディングも相まって名盤になったのだと思う。

 

デューク・ジョーダンは50代後半になり、NYを離れてコペンハーゲンに移住。デンマークで穏やかなで幸せを見つけたんだと思う。


No Problem/Duke Jordan

苦労があっても、人生 終わりよければ全て良しなんだなぁ。

 

今朝3時過ぎに目が覚めて外を見たら、真っ赤な三日月の月の出だった。不思議な感じがしたので、寒い中思わず写真を撮りに外に出た。

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2021年1月31日 今日の1枚

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年が明けたと思ってたらアッという間に1月も終わり。

まもなく孫と1日違いの誕生日を迎えます。

そんな1月最後の日曜日は、みんなで聴けそうなスタンダード集にしました。

THE SUPER JAZZ TRIO『THE STANDARD』

ザ・スタンダード(期間生産限定盤)

ザ・スタンダード(期間生産限定盤)

 

これぞ、職人芸の極み。

トミー・フラナガン、レジー・ワークマン、ジョー・チェンバースが集まったオールスター・ユニットTHE SUPER JAZZ TRIO "のラスト・アルバムにして唯一のスタンダード・ナンバー集。トミー・フラナガンがリーダーで吹き込んだスタンダードナンバーを集めたアルバム。タイトルがアルバムコンセプト。

「枯葉」、「いつか王子様が」、「エンジェル・アイズ」といった人気の高いナンバーを、ベテラン・ミュージシャンならではの安定感で料理している。

 日本ではこの手のシーボー(帽子)をかぶってるのは、ほぼゲーハーなので、ハンチング帽=その下はゲーハーという法則があ留が、さすが米国。そんな法則に当てはまらずゲーハーはひとり、ファッショナブルなオシャレ帽として被ってる。

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収録曲も聴きなれたものばかりですし、JAZZは難しくないんだよ!楽しいよ!と言ってくれてるようなアルバム。馴染みがある曲ばかりなのでアドリブの面白さやベースやドラムスとの絡みが楽しめる仕上がりになってると思うが、辛口のJAZZ好きからは、すぐにそれぞれのソロパートが出てきて、それが一様で全体に凡庸だとか、ありきたりのスタンダード曲を上手に演奏しているだけで、何のインスピレーションもスリルもロマンも感じられないとか散々な言われようだが、楽しく聴ければいいじゃないかと思う。

このアルバムは、あのスタジオで録られた音。

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それにしても自分たちでSUPER JAZZ TRIOと言ってしまう辺りが男前。

個人的にはゴリゴリのベースがいい、とてもいい。レジー・ワークマンの独特のベースがビュンビュン唸る。そして3人のアンサンブルもいいし録音も素晴らしい! 特にドラムの音は圧巻(微小音~強く叩いた時まで)多少エコーのかかったような響きが最高なので、「ひょっとして?」と思ってクレジットを見たら

「❗」

Recorded The Power Station, NYC, February 14, 1980

Power Stationサウンドだったかと、一人で納得。

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NYの10番街と11番街の間、53丁目にある元は発電所だった所をTV stとして使ってたのを改修したスタジオ。ボン・ジョビの叔父が設計者。ボン・ジョビ家は元々棺桶を作ることを生業としていたので、端材の杉板を張り巡らせて創ってある。幅がバラバラな端材がスタジオ創りにはちょうどよかった。また、スタジオの一番高い天井には意匠として「棺」の形をしている。

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この下にドラムを置くと乾いた音で薄くホールエコーもかかったパワフルなリズムが録れるというのでスタジオの名前がThe Power Stationとなったらしい。(知らんけど)

 

2009年に取材させてもらった時にはAvater Stになっていて、オーナーも日経3世の方だったが、いまはジュリアーニ音楽院がオーナー。

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OLD NEVEのミキサー卓が素晴らしいコンディションで鎮座していた。メインテナンスが大変で、当時ですら部品がなかなか手に入らないと言われてた。卓以外にもTUBEマイクやアナログレコーダーなど70〜80年代の音が一番良かった時代のアナログ機器の名機がさり気なく沢山あった。

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オーナーから聞いた話で、ビリー・ジョエルシンディ・ローパーが同時期に別の部屋でレコーディングしていて、シンディが「ビリー、ちょっとこの曲のコーラス考えてくれない?」なんていうコミニュケーションが日常だったとか、ボン・ジョビがデビュー前にケータリングのバイトをしていて、夜中の誰も使ってない時にデモテープを録ってそれがデビューのきっかけになったとか、面白い話をたくさん聞けた。

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ボスことブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザU.S.A』のドラムの音が、まさにThe Power Station Sound。
Bruce Springsteen - Born In The U.S.A.


Bruce Springsteen - Born in the U.S.A. (Official Video)

 

拓郎さんの『サマルカンド・ブルー』もココで録られた。1986年

アルバムの中から「パラレル」


TY パラレル

このアルバムは色々と想い出があるけど、またの機会に。

 

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